従業員の自律と主体性を引き出す「働き方改革」フォーラム 開催レポート《後編》

フォーラムレポート《後編》は、経産省 藤岡氏による応援講演と、登壇者全員によるパネルディスカッションです。

パネルディスカッションおよび閉会の挨拶では、HHHの会のアドバイザーでもあり、APO研の名誉会員でもある神戸大学名誉教授 加護野忠男先生からもご助言をいただきました。

■応援講演「成長戦略としての働き方改革 ~Workstyle Innovation and Growth~」
経済産業省経済産業政策局 産業人材政策室 藤岡 雅美氏

経済産業省 藤岡さん

今日は『Workstyle and Innovation』と副題を付けた。政府のいわゆる公式な「働き方改革」については『ワークスタイル・リフォーム』なのだが、従来の働き方そのまんま少しずつ変えていくということを越えて、この国の将来のあるべき姿を見通したメッセージを伝えたく、イノベーションという言葉を使わせていただいた。

私の役歴は、前職がヘルスケア産業課で健康経営の立ち上げに関わった。そういう意味では、今日ここに来て、皆さんのお話から、健康経営がこんなに進んできていることを目の当たりにして、元担当者として嬉しく思っている。

今日は、働き方改革を捉えるために、その背景となる日本の構造がどう変わってきているのかということと、新時代の働き方をご紹介したい。

今、日本は第4次産業革命に入っている。第1次産業革命は蒸気機関、第2次が電力伝達、第3次がコンピューターで相当自動化が進んだ。今の第4次産業革命は、自立的な最適化が可能になるということだ。背景はIOTによってあらゆるものがつながること、さらにビッグデータから新しい価値を生み出すこと、そして人工知能AIによって、人間を超える高度な分析や判断が可能になってくる。こうした、複雑な作業が自動化されていくな技術の中で、産業構造が劇的に変わってきている。

よく言われるのが、人工知能によって雇用が奪われるという話。でも人工知能を使うのは、結局人。つまり人工知能を使える人か、人工知能を使いこなせない人かというのが問題になってくる。新たな技術が労働の性質を劇的に変えることは確実だ。第4次産業革命で要求される労働者の能力は、継続的な適用と多様な状況下での新たなスキルとアプローチの習得。つまり、個人一人一人のあり方に相当影響を受ける時代に変わっていくということだ。

昭和の標準的な人生モデルは、結婚し、出産して子どもを産む。就職も新卒一括採用で、終身雇用で定年退職だったが、このような画一的なレールに乗って安心して生きていける時代は終わり、旧来の人生設計が壊れてきている。結婚して添い遂げて子どもを産む人の割合は1950年生まれでは81%だったが、1980年生まれでは58%に落ちている。仕事もそうだ。定年まで勤め上げる人は1950年代では34%だったが約27パーセントに落ちている。非正規雇用や、兼業、副業、転職する人は増えている。さらに人生100年時代になり、どういう人生、社会を設計していくのかが問われている。

人口減少があり産業構造が変わっていく中で、男性中心の労働供給や業務の非効率性を生んでいる課題に対しては、多様なな働き手の労働参画が必要になってくる。また、年功序列、新卒一括採用、終身雇用によって人材の流動性が落ちている課題に対しては、社内にいる人材を把握して最適配置をしていく。社会全体としても最適マッチングが必要だ。

ここまでが、今の日本の働き方を取り巻く背景だ。
安倍総理から働き方改革の実行計画が出たとき、「2017年が日本の働き方が変わった出発点としよう。」と言われたが、その働き方改革って何なのか。
まず、同一労働と同一賃金。非正規社員と正規の待遇差をなくしていき、成果主義も視野に入れていく。あと、今回問題になっている長時間の労働是正。『三六協定』の中に特別条項がある。何が問題になったかというと、この特別条項を使うと労働時間の上限が青天井だったことだ。今回、これに上限を設けた。

労働時間と生産性を掛け算すると個人のパフォーマンスになる。その中で労働時間が減ると、今までの企業の生産を維持していくためには、当然この生産性が問題になってくる。そうすると、組織は個人がいかにパフォーマンス高くできるかということにフォーカスされてくる。この生産性を高めるためにいろんな政策がある。

一つ目は人材育成が必須だ。第4次産業革命を踏まえた上では、まず初等中等教育で日本全体のIT力を底上げするためにプログラミング教育が義務化されたりしているが、今後はビジネスパーソンが対象だ。各産業における中核的なIT人材どう作っていけるか。生涯現役でいるための学びのアップデートも必要だ。

二つ目は、柔軟な働き方の推進だ。フリーランスや兼業、副業といった働き方なども含めて、旧来での日本型雇用システムでは新時代に追い付かない。テレワークも含め、様々な選択肢の中で、自分のスキルや人生を設計できるような環境をつくっていくことだ。柔軟な働き方が推進されるよう、政府としても政策を進めている。

ずっと課題になっている中小企業の人手不足への対処や、今日も話題に上がっていたダイバーシティという課題がある。経産省が今まで取り組んできたダイバーシティの政策は、女性活躍が中心だったが、産業構造のこの変化に対応していくためには、もっと多様なダイバーシティ推進が必要である。

ダイバーシティを効果的に作用させていくことも重要だ。多様性を無視したり、文化的支配が根底にあって全然議論が進まないとかといった組織は、ダイバーシティを活かせない。逆にパフォーマンスが高いダイバーシティは、意図のあるメンバー選考がなされていたり、ちゃんと上位ビジョンを作って、そこに対してどういうふうにみんなが貢献していくかをマネジメントされていたりする。ダイバーシティは、事業戦略と人材戦略に不可欠なものなので、経営陣のコミットメントは必須である。

また、健康経営も、このダイバーシティと同じく、ちゃんとビジョンを作って経営がコミットして実施していくことが肝要だ。まず従業員の健康促進と活力を活性化して、パフォーマンス上がるようにすることで企業価値が伸びていく。医療費の削減効果も社会的に重要なところだ。大企業であれば「ホワイト500」と「健康経営銘柄」が、中小企業であれば健康経営宣言をされている1万社と、その上に健康経営優良法人という形がある。

最後に。働き方改革は、今年が実践の勝負の年。第4次産業革命の中で、テクノロジーを積極的に活用していくということが具体的な取り組みのひとつである。経産省も主導して、HRテック『働き方改革×IoT』というイベントを予定している。一つはコンテストという形で新しいサービスを出していってもらうもの。もう一つが、そういう技術を持っている企業のマッチングだ。

まとめになるが、第4次産業革命を見据えて、成果だけでなく生産性に注目することが必要、そのためにも、柔軟な働き方ができる環境を整え、人材というものの資産、ROAをどう高めていくかということではダイバーシティや健康経営が施策となるという話をした。これらは企業側の視点だが、働き方改革で一番競争にさらされるのは、結局個人だ。だからこそ、その中で私たち一人一人がどうしていくかを本気で考えないといけない。私自身も含めてだ。そこを最後にお伝えしたい。

■パネルディスカッション

パネルディスカッションの様子

ファシリテーター
神戸大学大学院経営学研究科 金井 壽宏教授

パネラー
武蔵大学 経済学部 森永 雄太准教授
NPO法人 健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫氏
ロート製薬株式会社 取締役副社長 兼 チーフヘルスオフィサー  ジュネジャ レカ氏
カルビー株式会社 執行役員 人事総務本部長 江木 忍氏
鎌倉市 市長 松尾崇氏
経済産業省経済産業政策局 産業人材政策室 室長補佐 藤岡 雅美氏

金井:私は、パネル討議のモデレーターをやらせていただくことよくあるんですが、こんなに大勢でしかも一人一人が素晴らしい方というのはなかなかないです。できる限り発言回数多くしてやりとりしたいなと思います。

まず、今回の「健康経営」や「働き方改革」というテーマに関して、ご自分が興味持たれた契機だとかが分かるようなことをお聞かせいただけますか。

岡田:産業医という視点から。働いている方の健康障害はどこに原因があるかというのは、基本的には入社したときは元気なわけなので、入社した会社によるということになります。なかには退職後1年以内に亡くなったり、脳卒中になったりする人が多い会社なんていうのもあり、産業医仲間では、全殺しの会社、半殺しの会社なんて言ったりします(笑)。これは会社がどんな健康管理をしているのか、どんな仕事を与え方をしてるのか、要するに働かせ方と働き方の問題であると思います。

産業医は、病気を診るだけでなく、今は予防医学も重要な視点になってきました。働き方、働く環境、働かせ方、といったところに、私たちが関わることができるようになってきたので非常にうれしいなと思っています。

パネルディスカッションで発言する岡田先生

ジュネジャレカ:私たちロート製薬は健康経営と言っていますが、会社からあなた痩せなさい、あなたこうしなさいと言われたら、なんで会社からこんなこと言われるんだと反発を生む可能性があります。強制するのではなく、不健康に仕事できないような環境づくりをしていくことが大事です。

それから健康経営をする目的ですが、健康経営をすることで、この会社に入社したい、この会社に就職できて良かったと思ってもらえる会社にしたいですね。できるだけ私たちは長く働いて長く健康で活躍できる人材を作っていきたいなと思います。

江木:人事のミッションというのはよく管理することだと思われがちなんですけど、私は企業の変革をリードするのが人事のミッションだと考えております。2010年に当社の経営方針大きく変わって、変革に一歩踏み出しました。私はそれまでずっとマーケティングをやっていたんですね。人事のじの字も知らないど素人だったんですが、この年に手を挙げて人事やらせてくださいと社長に言って人事になり、今5年ぐらい経ちました。人事をやってみて同じだなと思いました。お客さまが社員に変わっただけなんだなと。
社員にその気になってわくわくしてもらう、やってみようかなと思うようなそんな仕掛けや制度を作り、提案し続けていくということが大事だと思ってます。働き方改革や健康経営もその一つで、やっぱりみんながノリノリになって関わってもらえるような仕掛けをこれからも作っていきたいなと思っています。今日は皆さんからたくさんのヒントを学ばせていただきました。

松尾:鎌倉市役所で先ほどお話した不祥事が3年前に起きたときに、実は、それに関わった課長が鬱病になったんです。私もとても信頼している仲のいい課長だったので、元気になって戻ってきてほしいと思っていたんですが、自殺をしてしまいました。彼のお兄さんから「二度とこんなこと起こさないでくれよ。おまえに任せた」と言われたんですね。私が健康経営に取り組み始めた原点は全てそこにあります。何としても鎌倉市役所を働きやすい職場に変えていくということを、使命だと思っています。

藤岡:僕、実は看護師と保健師の免許を持っているということもあり、ヘルスケア産業課でやりたかったことが”予防”なんです。企業と力を合わせながらやっていけば実現できるんじゃないかということで健康経営に関わることになりました。
健康経営は、一言で言うと「行動変容」ということに尽きると思っています。行動変容を促すためにそれぞれの立場からどういう働きかけができるのか?ということを考えています。ありがたいことに今は「働き方改革」を担当させていただいているので、そういうものも含めて広めていきたいと思っています。

金井:ありがとうございます。今お話の中で行動変容ということをおっしゃったんですけれども、結局私たちが職場を変える、会社を変える、というのも、大本のところは、一人一人の行動が変わらなきゃいけないので、キーワードになると思います。

森永:私自身は経営学の領域でモチベーションの研究をやっていますが、大きな転機は2013年にヨーロッパの産業組織心理学会に参加したことです。このときにストレスの研究に触れたんですが、当然そこにはメンタルヘルスの問題なんかが背景にあります。日本ではまだまだ別の領域として認識されているモチベーションと、メンタルヘルス、両方を視野に入れた研究をしていきたいと考えています。

金井:では、次からは、登壇者の方から、お互いがこの人にはこういう質問したいなという問いがあったらそこにマイクをお運びするというふうにしたいと思います。

パネルディスカッション風景

藤岡:僕は金井先生の著書の『リーダーシップの旅』を読ませていただいて、リーダーシップというのは、働き方改革のキーワードになると思っています。個々の好きな仕事をやって成果が出ているときは、長時間労働をしても全然平気だし、楽しいし、それによってむしろプライベートも充実してくるといういい循環が生まれるものです。仕事への向き合い方というのは、働き方改革や健康経営とも関連が深いように思います。金井先生にお聞きしたいのですが、リーダーシップと健康や働き方との関連は何かあるのでしょうか。

金井:リーダーは、他の人を巻き込みながら1人ではできないことを実現していくものですが、これは働き方の土台になると思います。働き方の基盤にはモチベーションの問題があって、1人でやっているんじゃないという、ある意味ではリーダーシップの要素があります。

ジュネジャレカ:リーダーは非常に大きな存在だと思いますね。アメリカではトランプさんになりましたが、リーダーによって組織は本当に大きく変わっていくものです。私は山田邦雄というリーダーシップの下に健康経営をやっていますが、彼自身が模範になっています。全部自分でやってみせながら、命令するのではなく社員にやってもらう。当社にとって健康は大事だということを示して、経営として健康にお金も出すし、機会も作る。これがやっぱりリーダーとして大変重要なことだと思います。

松尾:今のリーダーシップの話ですが、私は、金井先生が世に広めたサーバントリーダーシップが私にとっては一番ふさわしいリーダーシップだと思って、参考にさせていただいているところです。

別の質問をしたいのですが、先ほど、ワークコミュニケーションができない企業はつぶれていくという話がありましたが、実際に仕事の中でコミュニケーションって、なかなか取りにくくなっていると感じています。そこを、どう改善していけばいいか、ヒントがあれば教えていただきたいです。

金井:コミュニケーションが取りにくいというときに大事にすべきことは、上位者がイニシアチブを持たないということではないかなと思います。上司はつい指示命令になりがちですが、部下のために自分にできることは何かと考えることができたら、コミュニケーションの入口になるのではないかなという気がしますね。組織は一人ひとりのおかげで成り立っているものでもあるし、実は上位者になればなるほどメンバーをコーチするのが役割だと思っています。
リーダーの役割は、お山の大将でぐいぐい引っ張っていくだけじゃないというのは、健康経営に関しても同様だと思います。見本を示したり、従業員の健康にプラスになるようその人を支えるとか、支えるための施策を探すとか。「働き方」の根本はチームワークやコミュニケーションの問題ですし、そういう意味でも全てを支えるのは健康で、その両輪がつながっていったらいいと思いますね。

江木:大変ピンポイントな質問になってしまうんですが、当社で今年度の最終課題は禁煙の推進なんですね。当社は、実は全従業員の3割以上という非常に高い喫煙率になっています。これから禁煙を推進していくにあたって、取り締まりのようにはしたくなくて、皆さんの健康を考えてそっと背中を押すということをしたいんですけども、何かこれは効果的だったというような秘策があったら教えていただきたいなと思います。

加護野:禁煙に関して私の経験を一つだけお話したいと思います。私は1999年の10月7日にたばこを止めて、次の2000年の10月にアメリカ滞在中に脳卒中で倒れたんです。病院に運ばれて第一声、お医者さんが聞いてきたのは、あなたは何年間たばこを吸っていますか?と。この病気の最大の原因は喫煙であると。しかし私は去年の10月7日にたばこを止めたんだと言うと、何年間たばこを吸ったのか?と聞かれた。私は30年間たばこを吸ったと。そうすると、禁煙したことで太ってストレスが高まったから倒れたんだと言われました。だから禁煙をやる以上は禁煙の周辺できちんとしたサポートをすることが必要だと、その点をお伝えしておきたい。

ジュネジャレカ:当社も全禁煙を徹底的にやろうとしているが、たばこを止めるということは、本人にとって想像以上にストレスになるようです。サポートシステムを一緒に作っていかないと逆にストレスになるということを考えておくことはすごく重要だと思いますね。

岡田:たばこを会社で禁煙指導するとどうしても抵抗する年代があります。30代です。調査するとストレス度が最も高いのは30代です。だからベースは何かというと、ストレスをいかに解消するかが禁煙の一つの大きな秘訣ですね。

20代の人は医者に喫煙のリスクを説明されて禁煙指導されたら、先生止めますわって次の日には禁煙できるんです。30代は無理です。そこから管理職になってちょっとゆとりが出て来ると急に禁煙できるんです。ストレスが減ると止められるんですね。何がストレスになっているのかつぶさに聞いていくと、子どもができた、夜泣きをする。奥さんはご両親の介護の問題、子どもの不登校の問題、など何かトラブルがあるんですね。そこにストレスを感じてたばこを吸っている。だから、医者や会社が介入できない問題もあるんです。

そのとき何が必要かというと情報提供です。楽に止める方法がありますよということ。禁煙外来で、禁断症状が出ずに禁煙する方法がある。いずれにしても、禁煙指導自体がストレスにならないように、止めたいと思ったときにはこういう止められるものがありますよ、いつも相談に乗ってサポートしますよということを発信していくことが大事ですね。禁煙だけでなく、健康については強制できないということを理解しておく必要があると思います。

ジュネジャレカ:藤岡さんに質問ですけど、経済産業省で健康経営を推進されていますが、これがどれぐらい社会に貢献して、どういう成果になっているのかということも見ていかないといけないということ。もう一つ、今経済産業省が旗振っていますが、厚労省とか農水省とか連携してやらないと本当に健康の推進になっていかないのでは、ということについて、どうでしょうか。

藤岡:ありがとうございます。まず、健康経営というテーマでは、従業員の行動変容、それから企業の行動変容をどう推進していくかということになる。企業の行動変容をさせるためには、企業の経営者の方が従業員の健康に目を向けていただく構造を作りたかったんですね。そういう意味で、資本市場を絡めた形で「健康経営銘柄」という推進策をやったんです。当然資本市場が絡むので、やっぱりROEというのは絶対に外せないというのがあったので入れる仕組みになりました。
ただ、ROEを入れなくても健康経営が本当に企業の成長に寄与するんだというデータが出始めてますので、これがある程度確証を得られるぐらいのデータ量がたまってくると、ROEを消してもできるんじゃないかなと思っています。

(会場に、ロート製薬株式会社 会長の山田邦雄氏が到着)

ジュネジャレカ:先ほどうちの山田の話をしましたが、今来たので、よければ山田から一言。

金井:それいいですね。山田さんにマイクを届けてください。

山田:今、会場に到着したところなので、今までの議論がわからない中でお話するんですが。「健康経営」とは何ぞやという感じだったのが、今や本当に標準ワードになってきました。それからまた「働き方改革」をするんだという機運が盛り上がってきていて、時代の変化の早さをすごく感じています。

ただ、われわれ自身もいろんな取り組みをしているんですけれども、本当の意味での中身・成果はこれからかなというふうに思っています。皆さんといろんな意味で刺激し合いながら、やっていけたらと思っています。

金井:ありがとうございました。これでパネルディスカッションは終了いたします。最後に、こうやって最高の方々にご登壇いただいたことに心から感謝申し上げますとともに、このテーマに関心を持たれて、皆さんがお集まりくださったことに心から感謝の気持ちを申し上げてお開きにしたいと思います。どうもありがとうございました。

■閉会のご挨拶
神戸大学 名誉教授 加護野 忠男氏(APO研 名誉会員・HHHの会 アドバイザー)

閉会の挨拶の加護野

加護野:パネリストの皆様、ありがとうございました。今日の話の中で、岡田先生が、健康経営をすると会社の業績が上がるが、業績のいい会社が良い健康経営をして、それでさらに業績を上げていくというサイクルが非常に重要なんじゃないかと言われましたが、私もそのとおりだと思います。

その点で、先ほどお話ありました「良い経営」というのは一体何で見ればいいかということなんです。経産省がROEを見て良い経営をしているかどうかの指標にしているということでしたが、これは私の視点から見ると大間違いだと思いますね(笑)。ROE経営のお手本と言われていたコダックはつぶれてしまいましたし、ROE経営からするとむちゃくちゃだと言われていた富士写真フイルムはいまだに元気に頑張っています。

むしろ今日いらっしゃっている皆さんにはぜひ考えていただきたいのは、何をもって生産性を見るのかということなんです。去年の年末に関西生産性本部が派遣したヨーロッパの発表を聞いたんです。彼らの発表によると、ヨーロッパの企業の生産性指標と日本企業の生産性指標はよく似ているけど微妙に違う。日本企業の生産性指標は1人当たりいくらです。ヨーロッパ企業の生産性指標は1時間当たりいくらです。日本の1人当たりで考えると、長時間働くという形でアウトプットを上げる、生産性上げるという行動になってしまうが、ヨーロッパのように時間あたりの生産性を考えると、時間を増やさないで付加価値を上げる方向へ考えることになる。私はそのとおりだと思っています。ROEより良い指標だと思いますので、ぜひ皆さん会社に帰って、わが社の1人1時間当たり生産性がどのぐらいになるかと。この10年間でどう推移してきたんだろうかということをきっちり見ていただいていただきたいなというふうに思いますので、最後の一言だけそれを付け加えて閉めたいと思います。

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フォーラム終了後の懇親会にも多くのご参加をいただき、「働き方改革」や「健康経営」、それらを取り巻く様々な課題について、活発な議論と情報交換が行われました。

これからも、APO研は「働く人のイキイキ・組織のイキイキ」をテーマに様々な活動と情報発信をしてまいります。どうぞご注目ください。